大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和25(あ)2884 決定

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人高橋正平の上告趣意第一点について。

第一審判決は、被害者Aが、被告人は検事であるから代金は支払つてくれるもの

と誤信した結果、金約五百円に相当する酒食を被告人に提供した事実を認定し、原

判決もこの事実認定を肯認しているのである。しかるに、所論援用の当裁判所判例

の事件では、被害者は畏怖の結果として財物の交付をするに至つた場合なのである

から、本件とは事例を異にし、従つて、原判決は何等右判例と相反する判断を示し

ているものではない。所論は結局事実誤認並びにこれを前提とする擬律錯誤の主張

に帰着し、適法な上告理由にならないし、また記録を調べても、この点に関して刑

訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

同第二点について。

所論は量刑不当の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由にあたらないし、またこ

の点につき同四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第三点について。

所論は、原判決の憲法三二条違反を主張するのであるが、その実質は要するに、

原判決書は部名の表示を誤つているから、刑訴法、刑訴規則に違反するというに過

ぎないのであつて、もとより刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。そして、判決

書には裁判所名を示すを以て足り、部名を表示することは、刑訴法上要請されてい

ないばかりでなく、実際において原判決表示の「高松高等裁判所第一部」というの

が正しい部名なのであつて、所論のように部名の表示を誤つているわけでもないか

ら、単なる訴訟法違反も認められない。なお所論後段の原判決後被告人が不当な拘

- 1 -

束を受けたという点は、原判決に対する攻撃ではないから、適法な上告理由となら

ない。

被告人の上告趣意について。

所論は事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらないし、また

同四一一条を適用すべきものとも認められない。

よつて同四一四条三八六条一項三号、一八一条により主文のとおり決定する。

この決定は、裁判官全員一致の意見である。

昭和二六年八月九日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 澤 田 竹 治 郎

裁判官 眞 野 毅

裁判官 岩 松 三 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!